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広島家庭裁判所 昭和30年(家)865号 審判

申立人 大平文吉(仮名)

申立代理人 山野一雄(仮名)

相手方 大平フミ(仮名)

主文

相手方が申立人の推定相続人たる地位を廃除する。

理由

申立人は主文同旨の審判を求め、相手方は、かくの如き審判を受くるも止むを得ずと陳述した。そこで審按するに証人沢村マサ子、同沢村英吉の供述、申立人及び相手方の事実上の陳述に、申立書添付の戸籍謄本の記載を綜合すれば、

相手方フミは、昭和一七年○月○○日波野正夫と旧民法上の婿養子縁組婚姻をし、その間に長女美子、弐女恵子を挙げたこと。夫正夫は広島市○○町○製菓会社に勤務し、月収一万五千円を得、真面目な家庭生活を続けていること。相手方の父である申立人は旅館業を営み相当の収入を収めつつあること、相手方は家庭の主婦でありながら本年六月○○日突然無断家出し、情夫沢村英吉の許に走り、爾来同人と同棲していること、相手方の夫正夫は、相手方が非を悟つて帰来すれば、これを宥恕する意思を有しているので、申立人は相手方にこの旨を伝え二児の毋として家庭に帰るよう誠をつくして勧告したけれども相手方は夢より覚めないこと。相手方の情夫英吉の妻マサ子は、英吉の多くの乱行に堪えかね現在別居し離婚の意思を有することをそれぞれ認めることができる。

相手方が現に経済的苦痛のない家庭にありながら、夫正夫の不変の愛情を裏切り、父を棄て夫を棄て、愛児二人を棄てて仮令現在別居中なりとはいうも有婦の男性の許に走りて同棲し、父及び夫の寛大な復帰の勧告にも従はず、既に三ヶ月近く不貞を継続しているのは、相続人廃除の法定事由の一つである著しい非行に相当することが明かである。そこで当裁判所は参与員小○○郎、小○○○ヨの意見を聴き、民法第八九二条家事審判法第九条により主文の通り審判する。

(家事審判官 大田英雄)

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